暗闇から、その日暮らしの売女商売 4
- スラムリッチ
- 6月6日
- 読了時間: 3分
暗闇から、その日暮らしの売女商売 4

名古屋での最後の仕事も、2トントラックの自分のケツを拭くための、荷片付けだった。
倉庫で黙々と段ボールを運び、埃と汗にまみれて一日が終わる。
倉庫で仕事が片付けば奴隷状態も解散となった。
もちろん、給料なんてない。
その夜、僕の財布には何も残っていなかった。
手元にあるのは、数年モノのiPhoneと、使い古したサンダルだけ。
所持金ほぼゼロ、借金あり。
全てを失った僕は、情けなくも実家に戻った。
田んぼばかりの田舎町にぽつんと建つ、古びた一軒家。
玄関の引き戸を開けると、畳の匂いがかすかに漂った。
母は僕の顔を見るなり、ため息をついてこう言った。
「……何の仕事してるの?タトゥーなんか入れて、恥ずかしくないの?」
「…自分の勝手だろ」
「勝手?あんた、そんな見た目で…ヤクザにでもなったの?…」
玄関先で、泣き崩れる母、久々に会っても理解しあえなかった。
言葉を返しながら、心の奥がぐしゃぐしゃになった。
正しさなんてどこにもなかった。
ただ、もうここにも、僕の居場所はないんだと再確認しただけだった。
数日後、スマホに1本の連絡が入った。
かつて少しだけつながっていた知り合いからだった。
「おまえ、ノウハウあるんだろ?オレとやろうよ。
今、自分の住んでるとこよりもっと北――
本当に誰も来ないエリアで、農家のふりして10キロ育てる。
半年勝負で、儲かったら一回解散。
上物のクローンを使ってるし、間違いなく金になる」
最悪な提案だった。
けど、絶望に染まった僕にとって、それは唯一の“打開策”にも見えた。
死ぬよりは、こっちのほうがマシだった。
僕は残っていた撮影用の機材、PC、ボロボロの着替えを積み込んだ。
そして“相棒”になる予定の彼のトラップハウスへと向かった。

トラップハウスでYoutubeチャンネルを立ち上げる
そこは、本当に周囲に何もない場所だった。
夜は真っ暗で、音ひとつしない。
隣の家まで車で10分。人の気配すらない。
でも――この静けさが、今の僕にはちょうどよかった。
僕たちは、そこで“栽培計画”を始めた。
そして、ちょうどその頃。
僕はYouTubeチャンネル、スラムフッドスターを立ちあげ始めた。
誰にも頼れない世界で、インターネット上の自分の名前だけを武器にして。
開花から収穫して、半年後に金を手にして
それぞれ別の道へと正しく逃げるために…。
続く…

①暗闇から、その日暮らしの売女商売
②暗闇から、その日暮らしの売女商売
③暗闇から、その日暮らしの売女商売
④暗闇から、その日暮らしの売女商売
WRITER BY スラムリッチ
Comments