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トラップ・ドリル・ブーンバップの違いは?代表曲でわかるHIPHOP入門

執筆者の写真: MR.X
MR.X
18 時間前
読了時間: 6分


トラップ・ドリル・ブーンバップの違いは?代表曲でわかるHIPHOP入門
トラップ・ドリル・ブーンバップの違いは?代表曲でわかるHIPHOP入門

HIPHOPを聴いていると出てくる「トラップ」「ドリル」「ブーンバップ」という言葉。「名前は知っているけど、音の違いは説明できない」という人もいるだろう。

聴き分ける入口になるのは、ドラムのリズム、低音の動き、メロディの作り方だ。ただし、それぞれは地域や時代、コミュニティとも結びついており、音の特徴ひとつで完全に分類できるわけではない。

この記事では、よく聴かれる特徴と成り立ちを整理し、代表曲を紹介する。曲を流しながら読むと、違いをつかみやすいはずだ。

トラップ・ドリル・ブーンバップの違いを比較

まずは、おおまかな傾向を見てみよう。

スタイル

発展の背景

聴き分ける手がかり

トラップ

アトランタをはじめとするアメリカ南部のHIPHOP

深い808ベース、細かいハイハット、ゆったり感じる大きな拍

ドリル

シカゴで生まれ、ロンドンやニューヨークなどで発展

地域差が大きい。UK系では滑る低音と、跳ねるようなドラム配置が特徴的

ブーンバップ

1980年代後半〜1990年代の東海岸HIPHOPと強く結びつく

キックとスネアの存在感、サンプリング、反復するループのグルーヴ

これらはあくまで目安。トラップにもサンプリングを使う曲があり、ブーンバップにも電子的な音は登場する。「この音があるから必ずこのジャンル」と判断するより、組み合わせで聴くと理解しやすい。


トラップとは?深い低音と細かいリズムが生むグルーヴ

トラップは、アメリカ南部のHIPHOPを背景に発展したスタイル。T.I.、Gucci Mane、Jeezyらがその歴史を語るうえで重要な存在として挙げられる。現在広く聴かれるサウンドに至るまで、さまざまなラッパーやプロデューサーが形を変えてきた。

音の入口として注目したいのは、深く伸びる低音と、細かく刻まれるハイハット。大きな拍にはゆったり乗れる一方、その上では細かなリズムが動いている。この二つが同時に存在することで、独特のスピード感が生まれる。

Abletonの解説でも、トラップのドラムはTR-808由来の打楽器音と低音を土台に、デジタルな加工によって発展してきたと紹介されている。

よく聞く「808」とは?

「808」は、もともとRolandのドラムマシン「TR-808」に由来する呼び名。現在のビート制作では、そのバスドラムを源流とする、音程を持った低音を指して使われることも多い。

短く鳴るキックに対し、808ベースは長く伸びたり、音程を変えてベースラインになったりする。二つを重ねる場合もあれば、808がキックに近い役割を担う場合もある。

代表曲:Future「Mask Off」

トラップの入口として紹介したいのが、Futureの「Mask Off」。プロデュースはMetro Boominが担当している。

聴くときは、耳に残るフルートのフレーズだけでなく、その下を支える低音と、上で細かく鳴るハイハットに意識を向けてみよう。メロディ、低音、細かな打楽器を分けて追うと、ビートの構造がつかみやすくなる。

ドリルとは?シカゴから各地へ広がったスタイル

ドリルはシカゴで生まれ、2010年代初頭にChief Keefらの活動を通じて広く知られるようになった。トラップと近い音楽的要素を持ちながら、地元での生活や現実を伝える表現として発展してきた。

ここで大切なのは、シカゴのドリルと、後に発展したUKドリルを同じ音だと思わないこと。

ロンドンでは、シカゴからの影響に加えて、グライムやUKガラージなどの要素も取り込みながら、独自のビートが育った。その影響はニューヨークなどにも広がっている。

UK系ドリルでは、低音のスライドに注目

UKドリルやその影響を受けた曲では、音程が滑らかに上下する808ベースが聴き分けの手がかりになる。低音が一音ずつ鳴るだけでなく、別の高さへ滑り込むように動く。

ドラムも、均等に刻み続けるというより、音を置く位置と空白の組み合わせで跳ねる感覚を作る。こうした特徴は、UKの制作シーンを取材した記事でも紹介されている。

ただし、ベースのスライドはドリル専用の技法ではない。暗いメロディや激しい歌詞だけでドリルと決めるのも難しい。地域や制作背景まで知ると、理解が深まる。

代表曲①:Chief Keef「I Don't Like feat. Lil Reese」

シカゴのドリルを知る入口となる一曲。Chief Keefの初期の活動を象徴する楽曲として、その歴史を紹介する解説でも取り上げられている。

後に紹介するPop Smoke「Dior」と続けて聴き、低音の動きやドラムの組み方がどう違うかに注目してほしい。「ドリル」という名前の中にも、異なるサウンドがあることを感じられるはずだ。

代表曲②:Pop Smoke「Dior」

ニューヨークのドリルを知る入口として紹介したいのが、Pop Smokeの「Dior」。

ここでは、低い声とビートの低音を分けて聴いてみよう。ベースが音程を変えながら動く様子と、ドラムの間の取り方がポイントだ。シカゴからUKへ、そしてニューヨークへと広がったドリルの変化を考える際にも、聴き比べたい作品になる。

ブーンバップとは?キックとスネアが作る力強いリズム

ブーンバップは、1980年代後半から1990年代の東海岸HIPHOPと強く結びつくスタイルだ。

「ブーン」は低く響くキック、「バップ」は鋭く鳴るスネアを表す擬音として説明される。名前のとおり、この二つのドラムが作るリズムの存在感が大きい。

サンプリングとループの揺れを楽しむ

ブーンバップでは、既存のレコードなどから音を取り出し、切り刻んだり組み直したりするサンプリングが重要な役割を果たしてきた。ジャズやソウルなどのフレーズを使った曲も多い。

同じフレーズが繰り返されていても、ドラムのタイミングや強弱によって、身体を揺らしたくなるリズムが生まれる。Pete RockやDJ Premierらの制作は、その理解を深める入口になる。

ただし、「古い曲は全部ブーンバップ」「サンプリングしていればブーンバップ」という意味ではない。年代や素材だけでなく、ドラムとループがどう組み合わされているかを聴いてみよう。

代表曲:Gang Starr「Mass Appeal」

GuruとDJ PremierによるGang Starrの「Mass Appeal」は、ブーンバップを聴く入口として紹介したい一曲。1994年のアルバム『Hard To Earn』に収録され、DJ Premierがプロデュースを担当している。

注目したいのは、繰り返されるフレーズと、はっきりしたキック・スネアの関係。大きな展開を待つのではなく、同じループの上でラップとドラムがどう噛み合うかを楽しんでほしい。

初心者は、まずこの3曲を順番に聴いてみよう

違いをつかむには、短い時間で聴き比べるのがおすすめだ。

順番

曲

意識するポイント

1

Gang Starr「Mass Appeal」

キックとスネア、反復するループ

2

Future「Mask Off」

伸びる低音と細かいハイハット

3

Pop Smoke「Dior」

低音の音程変化とドラムの空白

最初は歌詞の意味を追いきれなくても大丈夫。まずドラムだけ、次に低音だけというように、聴く対象を一つに絞ってみる。

そのあとラップに意識を戻すと、「このビートだから、この言葉の乗せ方が気持ちいい」という関係も見つけやすくなる。

よくある疑問

トラップとドリルは、まったく別のジャンル?

互いに関係の深いスタイルだ。初期のシカゴ・ドリルにはトラップと共通する要素があり、そこから各地域で独自の発展が起きている。音の特徴に加えて、どのシーンから生まれた作品なのかも判断の手がかりになる。

ラップの速さで見分けられる?

ラップが速いか遅いかだけでは判断できない。同じビートでも、細かく言葉を詰める人もいれば、間を大きく取る人もいる。まずは声の後ろにあるドラムとベースを聴いてみよう。

日本語ラップにも、この3つのスタイルはある?

日本語の楽曲でも、これらのスタイルや影響を聴くことができる。ただし、ラッパー一人をひとつのジャンルに固定する必要はない。同じアーティストが曲ごとに異なるビートを使うこともあるため、作品単位で聴くと楽しみが広がる。

ジャンル名は、好みの音を探すための手がかりだ。気に入った曲が見つかったら、同じプロデューサーの作品や、その曲が影響を受けた音楽へと聴き進めてみてほしい。

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