
UKドリルが凶悪なリリックを多く含む理由は何か。その背景には、単なる音楽ジャンルの枠を超えた深い社会的要素が潜んでいる。ストリートの現実を反映しているUKドリルは、ロンドンの貧困地域、特にサウスロンドンやイーストロンドンのストリートカルチャーから誕生した。これらの地域では、ギャングの抗争、貧困、差別、警察との緊張関係が日常茶飯事である。アーティストたちは、その過酷な現実を音楽に投影し、結果として暴力的で凶悪なリリックが生み出される。
Opp (Opposition)
意味: 敵対者、ライバルギャングのメンバー
例文: "Caught an opp lackin'."
日本語訳: 「敵を油断してるところで捕まえた。」
Shank
意味: ナイフ、刃物
例文: "He got shanked in the ends."
日本語訳: 「奴は地元で刺された。」
Ching
意味: 刃物で刺すこと
例文: "I’ll ching him if he talks."
日本語訳: 「奴が喋ったら刺してやる。」
Drillers
意味: ヒットマン、行動派のギャングメンバー
例文: "We got drillers on deck."
日本語訳: 「こっちは行動隊が揃ってる。」
Bando (Abandoned House)
意味: 放棄された家(ドラッグ製造や隠れ家として使用)
例文: "Trappin' out the bando."
日本語訳: 「バンドでドラッグ売ってる。」
Trap
意味: ドラッグの売買を行う場所、もしくはその行為
例文: "He's been in the trap all day."
日本語訳: 「あいつは一日中ドラッグ売ってた。」
Splash
意味: 刃物で刺す、攻撃する
例文: "I’ll splash him in broad daylight."
日本語訳: 「真昼間に奴を刺してやる。」
Scoreboard
意味: ギャング間の勝敗記録(襲撃の成功数など)
例文: "We up on the scoreboard."
日本語訳: 「俺たちの方が勝ってる。」
Glide
意味: 敵地へ車やバイクで襲撃しに行くこと
例文: "We’re glidin' through their block."
日本語訳: 「奴らの地区を襲撃しに行く。」
OT (Out There/Out of Town)
意味: 自分の地域以外で活動すること(特にドラッグの売買)
例文: "He’s OT, making moves."
日本語訳: 「奴は遠征して稼いでる。」
FOOD
単なる「食べ物」という意味だけでなく、**ドラッグ(特にコカインやマリファナ)**を指すことが多いです。
使い方の例:
「He's moving food.」→ 彼はドラッグを売っている。
「I need to re-up on food.」→ ドラッグの在庫を補充しなきゃ
ROAD「道」や「道路」という意味を超えて、ストリートライフやギャングカルチャー、犯罪活動に関わる生活を指します。
ストリートで活動している人
「He's on the road.」
→ 彼はストリート(ギャング活動やドラッグ取引など)に関わっている。
刑務所から出てきたことを指す
「He’s back on road.」
→ 彼は刑務所から出てきて、またストリートに戻った。
ストリートでの評判や存在感
「He's known on road.」
→ 彼はストリートで有名だ。
UKドリル特有の表現
Mazza (Madness)
意味: クレイジーなこと、事件
例文: "Last night was a mazza!"
日本語訳: 「昨夜はマジでやばかった!」
Jakes
意味: 警察
例文: "Jakes are on the block."
日本語訳: 「警察が近くにいる。」
Ting
意味: 物や女性を指す言葉
例文: "That ting over there is fire."
日本語訳: 「あの子めっちゃ可愛い。」
Dem man
意味: あいつら(敵対者を指すことが多い)
例文: "Dem man don’t want smoke."
日本語訳: 「あいつら喧嘩したくないらしい。」
Leng (Gun)
意味: 銃
例文: "Got the leng on me."
日本語訳: 「俺は銃持ってる。」
UKのストリート文化的背景
UKドリルのスラングは、ロンドンのストリートカルチャーやギャング文化から生まれたものが多く、特にBrixton(ブリクストン)やPeckham(ペッカム)といった地区で使われる独自の表現が目立ちます。これらのスラングは、単なる表現以上に社会的背景や若者のリアルな生活を反映しており、音楽の中で自己表現や生き残りを示す手段として機能しています。
NetFlixドラマ”TOP BOY”(トップボーイ)では紹介したスラングがたくさん出てきます。
なんとこのドラマは、一度打ち切りになるも、あのDrakeが番組のファンでシーズン3から制作チームに加わるなど、裏社会の描写や設定がとにかくリアルで、息をのむような緊迫したシーン、貧困区域のリアルを表現したことから、高く評価されているドラマシリーズです。ヒップホップ好きに是非オススメしたいドラマである。
TOP BOY
ロンドンの貧困地域で生きる若者2人。栄光をつかむためドラッグディーラーとして暮らす生き様を、リアルかつスタイリッシュに描くドラマ。

『トップボーイ(Top Boy)』は、イギリス・ロンドンの架空の団地「サマーハウス」を舞台にしたクライム・ドラマで、ギャングの世界とそこに生きる若者たちの現実を描いた作品です。UKドリルやグライムのカルチャーとも深くリンクしており、リアルなストリートライフを映し出していることで人気を集めました。
再始動: 2019年にNetflixでリブート。プロデューサーにカナダ出身のラッパードレイクが参加したことで、国際的に再注目されました。
物語は、2人のギャングメンバー、ロンドンのドラッグ取引でトップに立とうと奮闘する姿を中心に展開されます。彼らの冷酷なビジネスの裏には、家族や友情、裏切り、貧困、暴力といった現実が交錯しており、単なるギャングドラマに留まらず、人間ドラマとしての深みもあります。
若者たちの視点から描かれることで、犯罪に巻き込まれる過程や選択肢の少なさがリアルに表現されています。
こんな人におすすめ
UKドリルやグライムが好きな人
リアルなギャングライフの描写に興味がある人
『ザ・ワイヤー』や『スノーフォール』といった社会派クライムドラマが好きな人
『トップボーイ』は単なるギャングドラマではなく、ストリートに生きる人々の現実と感情をリアルに描いた作品です。UKドリルの文化やロンドンのストリートライフを理解するうえで、非常に重要な作品と言えるでしょう。
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